受難の大学院 完結編

いやー 今日はまいった
論文投稿用の図を作って、さて、本文に付け足ししよう、としているところへオペレーター少年Oが泣きそうな顔して駆け込んでくる

なんとマシンを制御しているマックがいかれたそうな

うげ!

様子から察するにどうやらハードディスクらしい
昔懐かしノートンユーティリティー引っ張り出してきて、ハードディスクをマウントするところまではいけた
幸い今月に入ってからとったデータが救えたのはいいのだが、修復後もどうやっても起動せん

即刻、対応策をひねり出すペンギン君
まずは、使っていないマック(しかもOS9起動できるやつじゃないといかん)を発掘、少年Oとともにうんせうんせと運んできて、とりあえずばらし、前のマックについていたインターフェースをとりはずして新しいやつに付け替え、OSXになってたのをまたOS9に戻し、マシン用のソフトをインストールし……ただけじゃ当然まともに動かず、サービスエンジニアのおっちゃんとリアルタイムで電話で話をしながらなんとかかんとか以前の状態に戻したとこでおばちゃんギブ

これから長時間ソーティングに入るという少年0を残し、よれよれになって帰宅した

機械を常にちゃんと動くように保つのって、みなさんが想像する以上に大変なんすよ
こういう生活、もう体力がもちません
幸いオペレーターは2名ともおばちゃんの半分しかトシが行っていないので、なんとかがんばってくれているが

それ以前に、ここんとこうちの機械は連日予約が満杯
そろそろもう一台投入しないと、どうにもなりません
高額グラント、なんとかゲットしてください
よろしくお願いします >ボス

つーわけで、昨日のうちに書いておいた受難の大学院 完結編
さっそくいかせていただきます

<よいこのみんな 月日というものはあっと言う間に流れていくのだね>

D2の1年間は慣れない分子生物実験に手を染め
ジーンターゲティング用のコンストラクト作りとサザン用プローブ探しと条件設定、スクリーニングに使うPCRプライマー設計とこれまた条件設定、なさけないことにこれやるだけで終わり、いつの間にやらD3である

ES細胞の培養はD1だったA君が担当してくれており、ずっと続けてきたT細胞初期分化のテーマから派生したもう一つのプロジェクトは卒研生2人組が手分けして担当してくれていた
つまり卒研生2名に卒論書かせる、という使命も背負っていて、優秀な彼らは何はともあれ無事に卒業して行ってくれたのだが、この時ワタクシの下についていた学生諸君にはホンマ申し訳なかったと思う
ほんとのとこ、自分自身の面倒見るだけでもやっとで、指導どころじゃなかったっすよ

そんなこんなでD3である

だが、このころ、本当は何に忙しかったかと言えば、驚くなかれ、ロバートが言いつけてくるあれやこれやの雑用

明後日までにこれこれのスライドを作れ
研究室のホームページを立ち上げろ
レポート・試験答案の採点しろ
学生実習担当せえ
ついでに講義やれ
総説書いたから、内容読んで添削しといて
論文レビューまわすからやっといてよ
あそこの電球が切れてるぞ
マックの調子が悪いんだよどうにかしてよ
コッチの部屋からあっちへLANケーブル引かなきゃならんから、天井裏に潜って配線してこい ←ほんとにやった

…………… えーかげんにせーよ このおやぢ

それでも脳天気なワタクシはまだ、気づかなかった
いつの間にかロバートと話す内容は雑用のことばっか
ちっともサイエンスの話にならない、ということに

そして、実はプライベートな部分でワタクシは重大な局面を迎えていたのだった

ここんとこダンナの話がちっとも出てこない、と気づかれた方もおられよう
そうです、気づいたら家庭が崩壊していたのである

離婚に至る過程については多くを語るつもりはない
単に、気づいたらあまりにも心が離れすぎていて修復不能だった、というだけのこと
21歳で結婚して以来、20代というまだ未分化な時期に、渡米・受験・医学部・研究と大きな変化を経験し、様々な人々に出会い、広い世界を見て、価値観や人生観が変わらないわけがない
片や結婚時にはすでにオトナだった元ダンナの方はそのままである
どうにもこうにもかみ合わなくなるのは自明のことであった

研究テーマはなかなかはかどらず、いらんことばっかさせられ、私生活面も不穏

最悪である

ただ、ひとつだけ良いことがあった
T大ってとこは成果が出ている学生は3年で卒業・学位授与、という道筋を大いに推奨していたのである

その点、すでに充分な数の論文を持っていたペンギン君、飛び級候補者のスクリーニングにひっかかり、学系長(他大学の学部長)様からのお声がかりでD3終了とともに学位ゲット

学振DC1の3年目をPDに切り替え、残り1年をポスドクとして過ごすことになる

こうなると金銭面でもまず1年分の授業料が浮き、学振のお給金はDCからPDに切り替わってかなり増額、離婚後に自活し始めたばかりのとぼしいふところには大変ありがたい

で、その1年のポスドク中に海外逃亡先を探す、という作戦がここで成り立った

そしてこの年、もう一つの大きなできごとがあった

ペンギン君の現ボスである大ぼちゅがT大教授として若干35歳の若さで大量の手下達とともに着任してきたのである

初めて目にした大ぼちゅは当時、生涯における最高体重を記録していたらしく、どっからどう見ても若干35歳には見えず、その外観は当時話題をさらっていた某教団の教祖そっくりであったがため、ロバートはいまだに大ぼちゅのことを話題にするときは『おたくの教祖様』と表現する

とは言え、やってることはかたや神経、こちらは血液である
直接の接点は全くない
講義受ける学年でもないし

だが、一度だけ、3研究室合同ソフトボール大会、というものを催したことがあり、予想以上にヘビーなゲームとなったのだが、その時に
『なんやら、おもろそうなんが一匹おる』
という記憶が、大ぼちゅの脳細胞に刻まれたらしい

それが現在へ続く転機へと連なるわけだが、それはまだだいぶ先のお話

ともかくその年、D論出して卒業
とは言え、すでに発表してた論文の別冊に日本語要旨くっつけてファイルに綴じて提出しただけ
口頭発表もこれまでさんざっぱら学会発表でやってきてるわけで、一度も、練習したら?などと言う普通ならされる心配も全然してもらえないまま敢行し、あっさり完了

副査だったGATAでおなじみの大先生がほとんど無関係な質問してきて
『そんなん知りまへん』
と、ばっさり片づけた以外は全く問題なし、だったハズ

ちなみにこの後、つまんねえ質問すんぢゃねぇぇっ!と、GATAおやぢ氏のクビ締めておいたけど(で、あのおやぢはいまだにそれを言いふらしてまわってるけど)

というわけで、あとは海外留学先をじっくり探すだけ

行きたいと思う研究室へメール出しまくり、インタビューに行き、の後にボストン日記へと続くわけだが、一つだけどうしても書いておきたいことがありここまでながながと引っ張ってきた

ペンギン君の博士課程卒業は業界のおぢさん達(って、みんなよその教授様だけど)の間でも認識されており、ほとんどのおぢさん達はロバートが当然そのまま助手かなんかで雇うと思っていたようだ

いや……自分では全然そのつもりはないのだが、その当時(HP立ち上げる前)から妙に目立つ存在だったらしく、外の研究室に知り合いがやたらと多かったのである

ところが、ロバートの方ではぜーんぜんそんなつもりはなく
とっとと留学すればぁ~? ってな感じ

ま、こっちもそのまま残って雑用にこき使われる気はさらさらなかったので、別に いい

別にいい、のだが、どーしても声を大にして言いたいことがある

何が言いたいのか、というとボスには2種類いると思うのよ
『仕えがいのあるボス』と『仕えがいのないボス』

この分類で行くと
うちの大ぼちゅは前者
ロバートは後者の典型

虎の穴へ来て何に安心したかというと、それは苦労人であるうちの大ぼちゅが、雑用だろうと、研究だろうと、に関わらず、ラボのためになること、に対してちゃんと正当な評価をしてくれるところである

一方ロバートは持ち前のおぼっちゃま精神にのっとって、ヒトから何かやってもらうことに慣れきっておる

それがため、ラボのための雑用に腐心しているヒト、に対する意識レベルがきわめて低い

確かに大学院の3年間、ロバートのためにありとあらゆることを率先してこなしてきたその評価が、さっさと留学すればぁ~ だったことは結果としてプラスに働いた

なんせ、それで目を覚ましてとっととロバ研を後にし、その後様々な苦難はあったにせよ、現在こうして大ぼちゅのとこで幸せにやってるわけだし

とは言え、その当時、もしも
ロバートがもう少しちゃんと遇してくれてさえいれば、雑用やってるペンギン君の心がもっと安らかだったはず
ちう思いは今後も絶対に消えないだろう

この点、現在ロバ研で便利屋やってるS君と虎の穴の便利屋S君(奇しくも両者ともSだ)を比較するとおもしろい
その両者をよく知っていて、自分自身が便利屋だった私にはその置かれている立場の明確な違いがありありと見えるのである

そんなわけでちょっと前にロバ研のS君から悩んだ末の相談を受けたペンギン君はそっこーで
「はよ外へ出て行って、いい仕事して見返しておやり」
と、答えた

なんせロバ研で雑用がんばったところで、なんもいいことがないから

で、自分がPI見習いとなった今、これだけは、と、日頃から気をつけていること
・院生君達にはできるだけ雑用はさせない
・やっといた方がいいと思う時はわざわざ院生を任命することもあるが、その事はちゃんと評価する

この2点である

まぁ申請書を書いたり、答案の採点したり、論文のレビューやったり、ということはこれから先で役に立つ経験にもなろうから、下々に回すことがあるかもしれんけど

少なくともホコリまみれの天井をはい回らせたりはしないよ おばちゃんは ←かなり根に持ってる

つーわけで、ロバ研をあとにして一路ボストン編へ
当時は書けなかった裏話いっぱいあるぞぉぉぉっ!

ところでセクシー女教師はほんとに中学生教えてんのか?
オナってばっかやん
あ、学問・科学ランキングの方ね →