医学部での道草 完結編

あ~ 正月休みも今日で終わり
あっと言う間のできごとでしたわ

ボストン時代の夏冬2週間まるまるお休みがなつかしい
とは言え、世間様ではすでにお仕事中の方が多いわけで

やっぱ勤勉っすね 日本人

さて、お正月態勢でひっぱっていた医学部での道草 完結編
いいかげんアップしとかんと、次はいつになるやら
(すぐに大学院編が始まる気もするが)

<よいこのみんな 執筆活動は計画的に>

さて、大学とR研を往復して明け暮れた医学部生活もとうとう6年目
誰が何と言おうと国家試験という巨大な壁まであと1年である

その当時、T大の6年次というのは
夏休み前まで3ヶ月の院外実習
9月以降は毎週毎週、各科ごとの試験が卒業までえんえん続き
2月初旬(頃だったと思う)に全体を網羅する卒業試験
3月末が本番の国家試験
卒業式後の4月に合格発表
というスケジュールであった

そして当時のT大は、毎年の国試合格率がトップ5に必ず入っている、ということが大きなウリであった
そのカラクリは簡単
国試よりも難しい卒試に合格しないと国試が受けられない、のである

いずれにせよ、夏休み後は毎週試験なのだから、そりゃいやでも勉強せんといかんしくみになっておる
なんせその年から国試の形式が変わり、マイナー科の試験が全科からまんべんなく出題されることになったため、それでなくとも膨大な範囲がさらに広くなったわけで、こりゃまたえらいことなのである

あまりにも広大な荒野を一人で歩くのは寂しい、ということで、ほとんどの面々は仲良しグループごとにまとまって勉強会というものを発足させ、手分けして猛勉強する

グループの発足は早いところでは5年次
遅いところで6年の夏休み

ペンギン君が仲良しだったのは比較的独立独歩、ありていに言えば、かなりマイペースなめんめんだったので、勉強会発足は当然最後

しかも、ヘソ曲がりのペンギン君、それにすら参加せんかった

すなわち、結局全部一人でやったのである
ま、試験勉強の合間にもまだぐずぐずと実験やってたから、勉強会のためにわざわざ大学へ出かけていく時間がもったいなかった、ということもある

ひさびさの受験勉強に際し、一計を案じた
なんでかってーと、6歳年長のペンギン君、現役で入ってきた若者達と比較して、おどろくほど暗記力が低下していたのである

それに気づいたのは2年次の骨学実習の時
骨学というのはヒトのカラダを構成している全身のホネの名前および配置、そしてホネの各部分の名前全て憶えるという極悪非道な実習である

たとえば、大腿骨一つとったって、骨頭の右側と左側にそれぞれラテン名がついており、体部には筋肉と骨をつなぐ腱が付着している部分が微妙に隆起し、そのでっぱり部分にはちゃんと特別なラテン名がついている

それを全部とにかく憶えろ、とおっしゃるのである

で、ペンギン君、高校時代、暗記力には大変自信があった
ところが、それから6年後、2度目の大学生活では憶える先から忘れてしまう、という驚愕すべき事態に直面
ありゃ~ 暗記力というのは若さに比例するものであったか…

ということがそれからもしばしばあったため、国試の内容を丸暗記、なんて芸当ができるとはとうてい思えない

じゃ、どうする?

忘れもしない6年生の夏休み、これから各科試験が始まる前に、一度全体の勉強をしとこ、とばかり始めたのは

今は廃刊となってしまった「ガイトンの人体生理学 上・下」を熟読し、ヒトのカラダのしくみを生理学的に理解する

ということであった

そしてそれが結果的に大正解だったのである

もちろん、ガイトンの生理学だけで合格できる、なんて勘違いされては困る
内科・外科・マイナー科の国試本とクビっぴきで疾患名とその鑑別法はもちろん憶えなきゃどもならん
だが、それを全部丸暗記するのをあきらめたのである
異常な症状が一体どういうしくみでおきるのか、ということを生理学的に理解しつつアタマに入れるようにした、ということなのでお間違えなく

で、結局のところ、それが功を奏し、難関の卒試は夏休み中の2週間の集中勉強(と、もちろん前日のつめこみ)

国試も直前2週間の集中勉強(主としてなにがなんでも暗記しなきゃならんもの)だけでなんとかなっちゃったのよ

国試と言うのは実は基本的に全部マルバツ方式。

以下の文章のうち正しいのはどれか?
1.ペンギン君は実は雌である
2.ペンギン族はノンキ者が多い
3.ペンギンはアルコールを好む
4.ペンギンと命名したのはおいちゃんである

A. 1,2,3 B. 1,3 C.2,4 D 4のみ E. 全て

というよーな問題がほとんどで、これはマルチチョイス方式と呼ばれる
したがって何度も繰り返し出てくる問題が多いのは当然のことで、過去問というのが非常に大きなウェイトを占める
T大の場合、国試と同じ形式の卒試対策をしているうちに自動的に過去問に取り組んでいるのと同じことになる、という状況も合格率アップには非常に有利に働くものと思われる

んで、過去問では見たこともない設問が出てきたら、ペンギン君、まず考える
『あーなってこーなって、そのせいでこういう症状が出てるんだから、答えは コレや!』

なぜかほとんど間違わなかった

同級生のM井が感に堪えないと言った風情で
『ペンさんは全然勉強してる様子がないけど、必殺技があるからなぁ。考える!っていう…』
とのたまったことから考えても、他の面々のほとんどがひたすらつめこみ暗記していたことがしのばれるのである

イヤ…おばちゃんにしたって全部憶えられるもんならそうしていたと思うのだが…

ともあれ、さすがに6年ともなるとひたすら試験に明け暮れ…てるかと言うと、そうでもなく、舞台裏ではbcl-2という遺伝子のノックアウトマウスを使ったプロジェクトがかなり遅いスピードではあるがそれでも着々と進行しており、夏休みの猛勉強というのも、これはいくらなんでもヤバイ!というギリギリまでなーんもせんかったのであるからお気楽にもほどがあると言えよう

その年の血液学会は秋だったのだが、ペンギン君発表の日時と小児科の試験が重なってしまい、ロバートが代わりに発表
『ペンギンが試験で来られないため、代理をつとめさせていただきます。』
とやって、大ウケしたとのこと
出てった途端、ペンギンさんフケたなぁ~! と、ロバートをヤジったのはK大ウイ研の某Yせんせだったらしい

免疫学会では悪いおぢさん達の陰謀でオーラルセッションの座長をつとめる、という大役をおおせつかり、前のセッションが終わって座長席へちょこんと座ったら
『そこは座長席ですので、座らないでください』
と、会場係に追い出されそうになったり
陰謀に関わったおぢさんたちのほとんどが見物しに来ていたため、会場は超満員

当時ロバートがリクルート中で、行き先が2ヶ所にしぼられつつもなかなか決定されず、一体どっちの大学の博士課程を受験すればいいのかわからんから早く決めてくれ!とやきもきしたり
もしH大に決まっていたら、最終学歴はH大医学部博士課程、ということになって、学歴ロンダリングにハクがついたのだが…

とか、こまかいエピソードは様々にありなかなか忙しかったのだが、それやりだすと終わらなくなるので、次へ進む

ともあれ、2月の卒試は無難にクリアーできていたらしく、めでたくご卒業(卒業式の模様も描きたいが、これまた割愛)
3月の国試のほんとにぎりぎりまで必死に集中勉強してやっとこさ前日遅くに都内某ホテルへ移動

当日、一緒に受ける同級生達と電車にゆられて行く途中
『いや~ 結局、公衆衛生まで手がまわらなかったから、なーんもやってないワ』
と、ふともらしたところ、一緒にいた面々、驚きあきれながら、
『せめてこれだけでも読んどけ』
と言って、小さな冊子をくれた

ありがたく試験開始までそれ読んでたら、なんと公衆衛生問題の8割がカバーできてしまった
持つべきものはほんとにいい友だちである

本番の試験は2日間に渡って行われる

初日のしょっぱな、いきなり見たこともない設問がずらり
をいをいをい 去年の過去問と全然違うじゃんよ~

なんせ前年の国試は戦後一番という合格率がニュースになったほどであった
したがって、次の年(平成6年、我々の代)はその反動で難しくなる、という当然のことに思い至らなかったのはうかつであった

見知った問題がほとんどないので、ペンギン君、例によって考え始める
推理の結果導き出した答えにマルをつけ、マークシートに書き込む
という作業をえんえん数時間

むっちゃ疲れた~
つか、ほんとに合ってんのかいな?

やっと1日目が終わってよろよろと建物の外へ
同級の連中がやはり青い顔しつつ話し込んでいる輪に加わり仰天する
なんだか聞いたこともない疾患名がぞろぞろ会話の中に出てくるのである

どわぁぁぁ こらアカン
なんせこっちは同じ設問で導いた答えが超メジャーな心室中隔欠損症だってのに、その場にいたほとんどの面々が×××症(←記憶にすらない)
しかも、『あの心電図、典型じゃないんだもんずるいよ~』とか、ペンギン君には全く理解不能な会話が繰り広げられている

で、あわくってるペンギン君に視線が集まり
『ペンさんは何にした?』

ワタクシですかっ?!
つか、オイラの意見なんぞ聞いても意味ないと思うのですが…

ちーさな声で
『VSD…』
と、言ってみたところ、その場にいたどっちかと言うとあんまり勉強してない少数の面々があからさまにホッとした表情を浮かべたのをワタクシは見逃さなかった

んで、代わりに青ざめたのは必死こいて勉強してた面々
『…ペンさんのカンはするどいからな~』

………失礼なっ 科学的洞察力と言ってくれ ←小声

そんなこんなで、かなーりあぶない初日が終了

正門を出たところで国試予備校というところの職員がたった今終わったばかりの試験の正解というものを配っており、一体どういうしくみになっているものやらあきれつつもありがた~く押し頂いてホテルへ戻り、例の問題の答えを見てみたら

答:VSD

………野生のカンというのはおそろしい ←カンかよ!

野生のカンの勝利か、科学的洞察力の勝利か
それとも単に引っかけ問題にひっかかるほどの知識がなかったのが幸いしたのか
何が決め手となったのかは皆目わからんが、ともあれなんとかかんとか合格してしまったよ ママン

実は発表当日もラボにおり、見てきて電話くれたのは同級生のH
『あ、そう 受かってた? ありがと』
と、電話口でしゃべってるのを聞いて仰天したのはラボのメンツ

うっそぉぉぉぉ あんなんでっ?!

しかし当人は一番できなかった筈のA問題(初日)が、答え合わせしてみたら7割正答していた、ということを根拠にそれ以降の問題は答え合わせすらせず、実は結構自信があったのぢゃが…

どうも周囲とは見解の相違があったらしい

それにしても、その年の国試、実に空前の低合格率だったのである
同期にしたって、それまでの学年は何年も続けて現役生の合格率100%をほこっていた状況だったのに、うちの代は数人が気の毒にも不合格という異常事態
合格率が40%以下でニュースネタになった大学すらあった

今考えれば、よく受かったよなぁ…

ともあれ、これで晴れて、ペンギン君も自由の身
ロバートがタイムリーにR研からT大へ移動すると決定し、大学院も合格しとるし

というわけで大学院編へ…続き、あとは普通に研究生活が始まると思うのだがそうはいかない
これまた仰天事件多発

以下、大学院生活へ続く

ひさびさに貼っとこ
国試合格を記念してクリック一発
こちらはマルチョイではなく選択肢が一つだけ
まよわずヒットできますな →